さそりのしっぽ

すすめ、なまけモノ

とりあえず、逃げろ(後編)

いじめにあったら、いそいで逃げろ。

私がいじめについて伝えたいことがあるとしたら、それだけだ。

 

いじめとは、その人が本当に解決しなければならない問題から逃避するために、自分のおもちゃとして人をいたぶる行為である。

だからいじめはいじめる方が100%悪い。標的になった人間に落ち度はない。

 

以前の日記『劣等感をくいものに』で、いじめの本質は人を傷つけて束縛し、道具にすることだと書いた。

そんなふうに思うようになったのは、今までいた場所の中で息苦しい場所を思い出すと共通点があったからだ。

それは、

 

上司なり先輩なりが人を傷つけて支配する達人であるということ、だ。

 

一番ほめてほしいポイントをあえて外し、

一番痛い弱点を徹底的になぶり続ける。

おまえにここにいる価値はないといわんばかりに。

 

もうずいぶん昔なのにはっきりとおぼえているやりとりがある。

長い期間一緒に組んでやっていかねばならない仕事に携わっていたときの、ペアの先輩とのやりとりだった。

 

先輩「あなたが普通にやってくれればうまくいくのに。」

私「その普通がわからないから困っているんですよ。」

先輩「普通がわからないあなたの感性がダメなのよ。」

 

こんなやりとりをほぼ毎日していた訳だから、自尊心なんてめちゃくちゃになるのは当然だ。

辛かったなあ。

その時期は、プライベートも何やってもうまくいかなかった。恋愛なんてとくに散々だった。

そりゃそうだ。いつも自分に自信が持てずに鬱鬱としているんだもん。

その人と離れたとたん、肌がプリプリになって、運命っぽい人に出会って・・・なーんてことが立て続けにおこった。

自尊心って大事なんだなあと痛感してしまった。

そして、結局先輩にもっとも効果的な対処法は「逃げる」という一手だったことに呆然とした。

そんな簡単な方法でよかったのか、と。

 

 

いじめられっ子がいじめっ子から逃げたり断ったりできないのは、恐怖のせい。

そして、自分は弱くてダメな奴だと思ってしまうせい。

心を傷つけられると心のエネルギーが減ってゆく。

立ち向かう力が少しずつそがれてゆく。

いじめっ子はたいがい賢い。ただ、それは頭に「ずる」がつく。

人の心をいたぶるのに効果的な言葉づかいの、天才だ。

 

 

入社式で社長が熱血高校教師のように「商品価値を見いだせない、会社に利益をもたらせないやつはお荷物でクズだ!」と熱弁をふるう。

研修の段階から、長時間理不尽なことを言われる。 

そういう会社もあるらしい。

そうして考えない道具になっていくわけだ。

 

その場所にとどまる限り、奴らは追ってくる。

組み敷ける人間がいる限り、自分は相対的に優れた存在でいることができるから。

 

だからこそ、逃げて奴らをシャットアウトしないと。休んでエネルギーを蓄えないと。

自分のやりたいことをやる正気を取り戻してから、次の一手を考えよう。