とりあえず、逃げろ(前編)
「3月のライオン」という漫画がある。
羽海野チカという少女漫画家が書いている。
「ハチミツとクローバー」の作者だよ、といえばわかる方も多いだろうか。
ハチクロは東京の西側に生息する美大生のラブコメだった。
3月〜はハチクロを創っていたすべての要素を否定するかのような将棋まんが。月島が舞台。
お気楽な大学生とかいっさい出てこない。登場人物全員が家庭に何らかの問題を抱えているというすごい物語。
でも東京の東側の文化をこれほど暖かく、そして綺麗にかけるものをはじめてみた。さすが乙女の教祖。
ま、それはとにかく問題はこの5巻から7巻。
準主役のひなちゃんという女子中学生がいじめに遭う。
ひなちゃんの友達がいじめられて不登校になって、いじめっ子たちにはむかったらひなちゃんが今度は標的にされた。
上履きかくし、机落書き、はぶんちょなどなど考えられるすべてのいじめが出てくる。
学年一のモテ男がひなちゃんの肩持ったらよけいいじめがひどくなり、舞台はそのまま修学旅行へ。
ひなちゃんももちろん班には入るが、行動はつねに一人。
自由行動では集団を抜けて川にたたずむ。
切なすぎ。
こんなひどい目にあいつつも、音を上げない。いじめっ子たちにおもねらない。
落書きされても平然と消す。黒板に「こいつはビッチだ」とか書かれたら、担任がくるまで消さない。
聞かれたら、何食わぬ顔で「朝きたらもう書かれていた」と言う。体を壊したって、決して休まない。
「アイツらは何があっても認めない。すぎちゃえばホント簡単にケロっと忘れちゃう。
そんな奴らのために私が私の人生を棒に振る理由は一つもない。こんな所何があったって、生きて卒業すれば私の勝ちだ。」
そう言って、一歩も引かない。
結末は・・・まあ興味があれば読んで知ってくだちい、ということで。
それにしても、ひなちゃんの強さはどこからくるのだろう。
私は、家族だと思った。
すべてを話せる家族がいる。どんな状態でも受け入れてくれる場所がある。
一つでもそういう領域があれば人は正気を保っていられるんだとよくわかる。
ただ、じゃあ正しい例なのでこのまねをすればいいですかと聞かれれば、現実的にはノーかな。
こんな状態のまま学校に居続けるのは、リスクが高すぎるだろう。
物語ではこのあと学校の状況がよくも悪くもかわって、事態が動く。
でも、現実にそういうことはあまりない。そして学校とか組織というものは大概強い者の味方だ。あてにしないほうがいい。
だから、まずはその場から逃げた方がいい。いや、いいなんて軽いもんじゃない。
絶対に、逃げろ。
もしどうしても早急に逃げることができないのであれば、せめて自分が自分でいられる場所を持ち、迫害されているところから心を引き離せ。
と言いきったところで、
後半に続く。